第13回 問題39
【問題39】全身状態に関する次の記述のうち適切なものはどれか。3つ選べ。
1 心不全による呼吸困難時には、仰臥位をとらせると症状を緩和できる。
2 標準的な体重の場合は、体内の代謝産物を排泄するためにおよそ500ml/日以上の尿量が必要であり、不感蒸泄を勘案すると1,000ml/日以上の水分を摂取する必要がある。
3 体重の変化は、栄養状態や心疾患、腎疾患等の内部疾患の重要な指標となるため、定期的に把握するとよい。
4 消化管出血の場合は、赤色の血便となるので、黒色便の場合は消化管出血以外の原因を考える。
5 せん妄とは、意識障害を基盤にして、そこに幻覚や妄想、不安、興奮などを伴った状態である。
【用語解説】
●不感蒸泄(ふかんじょうせつ)
発汗以外の皮膚および呼気からの水分喪失をいう。皮膚からの蒸散のみを指すという意見もある。不感蒸泄の量は,条件により大きく変動するが,常温安静時には健常成人で1日に約900ml(皮膚から約600ml,呼気による喪失分が約300ml)程度である。発熱,熱傷,過換気状態などで増加する。
●黒色便
胃や十二指腸から相当出血している時に、みられる特徴的な便です。胃酸と血液が混合することで、黒色便になります。
●せん妄
病気や入院による環境の変化などで脳がうまく働かなくなり,興奮して,話す言葉やふるまいに一時的に混乱が見られる状態。「せん妄」は病気の名前ではなく,状態を表す言葉。
せん妄治療の基本は原因の究明とその除去です。
せん妄を疑ったらまず日頃飲んでいる薬をチェック。さらに血液検査、放射線検査などで身体の状態を調べます。最近になって心理的ストレスとなるような出来事がなかったかどうかを近親者に確認する。
原因の除去により多くのせん妄は治癒しますが、治療が遅れたり、手間取ると脳に障害をのこし慢性化することがあるので早期発見、早期治療が重要です。症状が激しいときは抗精神病薬などを用いることもある。
【解説】
問題 39【合否を分けそうな問題】
近年の医療分野出題傾向の1つに、サービス関連問題の減少とともに、各種疾病に関するアラカルト形式の問題作成方法の増加があげられます。簡単にいえば設問5つが、それぞれ異なる疾患に関するものとなっているタイプの問題ですね。まさしくこの問題39などが、その好例です。問題38の冒頭部分をご覧いただくとわかるとおり、高齢期に多い各種疾病は実に多種あります。広く、浅く(たまーに、マニアックに)が問題づくりの基本となる可能性が高いので、まずはあげられた疾病について、ひととおりの基本学習をおすすめいたします。
1× 【5訂 第3巻11P】
仰臥位という部分が誤りです。正しくは、【起座位】。からだを起こした状態にすることで、自覚症状、血行の改善が見られるとされます。(静脈還流を減少させ、さらに肺の換気量を増やすため)搬送時にも、仰臥位とせず、起座位で行うのが望ましいこともどうぞお忘れなく。
2○ 【5訂 第3巻5P】
設問のとおりです。【脱水】に関する出題も、これまで繰り返し行われてきました。脱水の原因、症状、対応、そして予防と総合的な学習をぜひ。汗をかいたり発熱した場合、通常は口の渇きによって飲水行動が促され、自然に調節されたバランスが維持されるものですが、高齢者ではもともと体内の水分貯蔵量が少ないうえ、口渇が 感じられにくく、健常若年者に比べ【脱水】になりやすいとされます。
3○ 【5訂 第3巻52~53P】
設問のとおりです。急激な体重減少は、悪性新生物、糖尿病の悪化、脱水症の程度を知るうえで、また、増加は肥満症や浮腫性疾患(心不全、ネフローゼ、肝硬変)などを把握するうえで有効となります。
4× 【5訂 第3巻226P】
昨年の本試験でも、問題31の設問4に下血に関する出題がありましたね。さかのぼってみると、17年問題36設問5にも発見。食道、胃、十二指腸などの上部消化管からの出血があった場合、血液が消化液にさらされて酸化するため、黒色となって便とともに排泄されることになります。黒っぽくどろりとした状態でコールタールに似ていることからこの名前がつけられています。
医療分野における出題範囲に、急変時の対応があります。
◆ 高齢者救急疾患の病態上の特徴
◆ おもな急変時の対応
◆ 在宅看護、在宅介護で遭遇しやすい急変
※ 意識障害
※ 胸痛
※ 窒息
※ 誤嚥
※ 発熱
※ 吐血
※ 下血
※ 転倒・骨折
※ 入浴中の事故
※ 腹痛
※ 嘔吐
※ 麻痺
高齢者介護の御仕事を続けるうえでも、避けては通れない【急変】。ならば、正しい対応方法の知識をもち、しっかりと受け止めたいものです。
5○ 【5訂 第3巻158~159P】
設問のとおりです。
【解答】2,3,5