第13回 問題42
【問題42】認知症に関する次の記述について適切なものはどれか。3つ選べ。
1 認知症の中核症状には、記憶障害、判断力の障害、問題解決能力の障害、実行機能障害、失行・失認・失語などがある。
2 認知症の周辺症状は、精神症状や行動異常のことで、BPSD(認知症の行動・心理症状)ともいう。
3 アルツハイマー病は、臨床症状とCTスキャン、MRI(核磁気共鳴画像)などの方法で、脳梗塞、脳出血の存在を認めることにより診断される。
4 入院、転居など生活環境を移すことの負荷(リロケーション・ダメージ)は、認知症に悪影響を及ぼすことがある。
5 血管性認知症の特徴として、易怒性や収集癖、窃盗などの人格障害や反社会的行動が知られている。
【用語解説】
●認知症
認知症とは、脳の疾患により、記憶、思考、見当識(時間・場所等の感覚)、理解、計算、学習能力、言語、判断を含む認知機能の低下した状態をいいます。意識の混濁はなく、認知機能の障害は通常、慢性、進行性で、情動の統制、社会行動あるいは動機づけの低下を伴います。臨床的には、これらの症状が、日常生活を損なう程度に達した状態が6カ月以上続いたときに、認知症の診断が考慮されます。従って、認知症は複数の症状を呈している状態であって疾患名ではありません。
認知症を引き起こす原因疾患には、① 脳出血、脳梗塞、脳動脈硬化のような血管病変、② アルツハイマー病、レビー小体病、前頭側頭葉変性症のような脳細胞の変性疾患)、③ 梅毒、AIDS 等の感染症、④ 頭部外傷、⑤ 薬物中毒などがあります。
●実行機能障害
実行機能障害とは、物事を総合的に考え、事前に具体的に計画を立て、実行することが困難になる障害。
例としては、電化製品が使えなくなる、食事の段取りが悪くなるなど。
●失行(しっこう)
高次機能障害(脳の損傷によって引き起こされる障害)の1つ。運動麻痺や知覚麻痺、失調、不随意運動がなく、行うべき運動・動作を理解しているにもかかわらず、目的にあった動作・行動が的確にできないこと。
●失認
五感を通して得られた対象を認知できなくなる病態。
例
物体は見えているのに、何だか分からない。
色覚が保たれているにもかかわらず、色を認知できない。
見慣れたはずの建物や風景を見ても、それが何であるか、どこであるか分からない。
物体を触っても、その形態が分からない。
など、五感から得た情報を認識できない。
●BPSD
Behavioral and Psychological Symptoms of Dementiaの略
認知症に伴う徘徊や妄想・攻撃的行動・不潔行為・異食などの行動・心理症状をいう。「問題行動」、「周辺症状」とも呼ばれ、記憶の障害・見当識障害・判断力の障害・実行機能の障害などの「中核症状」とは区別される。
●アルツハイマー病
認知症の原因の中心核にくる病気で、その症状を簡単にいうと、記憶力や物事を判断する能力が衰えていき、日常生活にまでも支障をきたすようになる。アルツハイマー病の原因は究明されていないが、アルツハイマー患者は、脳の神経細胞が大量に減り、脳が縮んでしい、多くは、もの忘れなどの記憶障害からはじまり、次第に症状が進行し、日常生活が困難になる。運動機能障害はほとんど見られないため、「もの忘れ」と「アルツハイマー型認知症」の違いがわかりづらい。「もの忘れ」と「アルツハイマー型認知症」の違いは、アルツハイマー型認知症の症状を自覚する人の多くは、「もの忘れ」で気づきます。しかしながら、アルツハイマー型認知症の特徴は新しいことから忘れていくという点で、ここが、加齢による「もの忘れ」と大きく異なる点です。
●脳梗塞
俗に脳卒中とも呼ばれる。
脳の血管が破れて起きる「脳出血」、「くも膜下出血」と、脳の血管が詰まって起きる「脳梗塞」
●血管性認知症
脳の血管障害、脳梗塞や脳出血によって起こる認知症を意味する。
●易怒性(いどせい)
気分が興奮してイライラとして落ち着かない状態のこと。
【解説】
問題 42【合否を分けそうな問題】
医療分野出題範囲において、認知症高齢者の介護があります。
◆ 老人性認知症の特徴・病態
◆ 認知症高齢者・家族への援助と介護支援サービス
過去の本試験においても、17年、問題31、18年、問題27、19年、問題43、20年、問題31、21年、問題43とメドレーでお届けできます。もちろん14回本試験においても、出題はほぼ100パーセントの確率です。受験生さんのなかには、まだ認知症の方と対応したことが無い方も多いと思います。冬休みに1冊、わかりやすく書かれた専門書をお読みになるのもおすすめです。学習にあたっての、ポイントをまとめてみました。
※ 認知症の疫学、認知症の診断、認知症の評価、
※ アルツハイマー病の原因、症状、診断、治療
※ 血管性認知症の症状、診断、治療
※ 上記以外の疾患の認知症
※ 老人性認知症の一次要因と二次要因とその特徴・理解
※ 認知症である症状の判断と対応のポイント
※ 高齢者虐待と認知症高齢者の権利擁護
※ 認知症高齢者と転倒・骨折
※ 認知症にかかわる新しい政策
1○ 【5訂 第2巻434P】
設問のとおりです。アルツハイマー病、血管性認知症のどちらにおいても記銘力(新しいことを覚えること)の低下が、著しいとされます。日時、場所、人物の見当識障害、計算力の低下、知識の低下、理解力の低下などもみられます。
2○ 【5訂 第2巻434P】
設問のとおりです。認知症の行動・心理症状として以下があげられます。
◇ せん妄
◇ 徘徊
◇ 睡眠障害
◇ 火の不始末、不潔行為、攻撃的な態度
◇ 妄想
◇ 作り話をまわりに言いふらす
◇ 幻覚
◇ 性的に困ったことをする
◇ 感情失禁・不安・抑うつ・焦燥・興奮
3× 【5訂 第3巻120P】
正しくは、脳萎縮(脳質拡大・脳溝の拡大)が見られます。オンライン模試Ver.3.2にも登場しましたので、トライしてくださった方は得点につなげていただけたとおもいます。
4○ 【5訂 第3巻122~124P】
設問のとおりです。学習ポイントとしてあげました、一次要因がアルツハイマー病や脳血管疾患となりますが、高齢者においては、二次要因も重要になります。加齢による生理的な聴力・視力の低下などの感覚器も機能低下が誘引となることもあります。また、心身のストレスに抵抗力のない高齢者では、入院、転居、退職などの環境の変化や、親しい人との死別などが発症の誘因となるため注意が必要です。オンライン模試Ver.3.3でも問われた問題ですね。
5× 【5訂 第3巻120P】
人柄はアルツハイマー病に比べると、認知症が進んでも比較的良く保たれるとされています。認知症は脳卒中発作のたびに、階段状に進行することが多く、徘徊、不潔行為、暴力、破衣行為などの行動障害(問題行動)を起こすこともあります。
【解答】1,2,4