第13回 問題38
【問題38】疾患に関する次の記述のうち適切なものはどれか。3つ選べ。
1 慢性硬膜下血腫は、血腫除去術の治療を行っても臨床症状の改善は期待できない。
2 インスリン治療中の糖尿患者では、食事が全くとれない場合でも、基礎分泌量に相当するインスリンが必要であるため、インスリン注射を自己判断で中止してはいけない。
3 脊髄小脳変性症は、安静時振戦、筋固縮、仮面様顔貌などを主症状とする神経変性疾患である。
4 関節リウマチの特徴として、手の関節腫脹が左右対称であること、1時間以上続く朝のこわばりなどがあげられる。
5 適切な薬物療法等を行えば、がん患者におけるがん性疼痛や呼吸困難感などの症状は、在宅においても緩和可能である。
【用語解説】
●慢性硬膜下血腫
頭部外傷後慢性期(通常1~2ヶ月後)に頭部の頭蓋骨の下にある脳を覆っている硬膜と脳との隙間に血(血腫)が貯まる病気で、血腫が脳を圧迫して様々な症状が現れる。慢性硬膜血腫は、高齢男性に多く見られる。一般的は軽微な頭部外傷後の慢性期(3週間以降)に頭痛、片麻痺(歩行障害)、精神症状(認知症)などで発症する。
●糖尿
血糖値が高くなる病気。(上手くブドウ糖を取り入れられない病気)
糖尿病は4つのタイプに分けられます。
・1型糖尿病
膵臓がインスリンをほとんど、あるいは全く作らないために体の中のインスリンの量が絶対的に足りなくなって起こる糖尿病。
・2型糖尿病
インスリンの量が不十分で起こる糖尿病と、肝臓や筋肉などの細胞がインスリン作用をあまり感じなくなるために、ブドウ糖がうまく取り入れられなくなって起こる糖尿病がある。食事や運動などの生活習慣が関係している場合が多い。日本の糖尿病者の95%がこのタイプ。
・遺伝子の異常やほかの病気が原因となる糖尿病
遺伝子の異常や肝臓・すい臓の病気、感染症、免疫の異常などの他の病気が原因となって引き起こされるもの。薬品が原因となる場合もある。
・妊娠糖尿病
妊娠時に現れる糖尿病。新生児に合併症が出ることもある。
●脊髄小脳変性症
歩行時のふらつきや、手の震え、ろれつが回らない等を症状とする神経の病気です。動かすことは出来るのに、上手に動かすことが出来ないという症状。主に小脳という、後頭部の下側にある脳の一部が病気になったときに現れる症状です。この症状を総称して、運動失調症状と呼びます。この様な症状をきたす病気の中で、その原因が、腫瘍(癌)、血管障害(脳梗塞、脳出血)、炎症(小脳炎、多発性硬化症)、栄養障害ではない病気について、昔は、原因が不明な病気の一群として、変性症と総称した。病気によっては病気の場所が脊髄にも広がることがあるので、脊髄小脳変性症という。
脊髄小脳変性症は一つの病気ではなく、いろいろな原因でおこる、この運動失調症状をきたす変性による病気の総称。よって、その病気の原因も多岐に及ぶ。
●安静時振戦
安静時に手や足の震えがでる状態。パーキンソン病に症状のひとつ。
●筋固縮(きんこしゅく)
筋肉が固くなってく動きが悪くなる症状。具体的にはスムーズな動きが出来なくなって、素早く動けない、歩行が不安定になる。転倒しやすくなる。一見、力が入らないように見えるが、握力や手足の筋肉の力は正常。パーキンソン病に症状のひとつ。
●仮面様顔貌(かめんようがんぼう)
顔面の筋肉の異常による、仮面をかぶったように表情の変化が少ない顔つき。顔面の筋肉を意識して動かし表情を変えることはできるが、感情に従って無意識のうちに起きる表情の変化は少ない。筋肉の硬直が起きるパーキンソン病、うつ病をはじめとした精神疾患の症状の一つとしてみられる。
●神経変性疾患
様々な原因により脳内の様々な部位で神経細胞が病的に死滅してしまうために生じる疾患の総称。 疾患ごとに障害を受けやすい神経細胞の種類がある程度決まっており、障害される神経細胞の働きにより疾患の症状が決る。
例:
運動を担当する神経細胞(運動ニューロン)の障害→筋萎縮性側索硬化症(ALS)
運動を調節する神経細胞のうち小脳などの障害→脊髄小脳変性症(SCD)
運動を調節する神経細胞のうちドパミン神経の障害→パーキンソン病(PD)
記憶を担当する神経細胞(海馬など)の障害→アルツハイマー型認知症(AD)
●関節リウマチ
免疫の異常により関節の腫れや痛みを生じ、それが続くと関節の変形や機能障害をきたす病気。
●関節腫脹(かんせつしゅちょう)
関節のはれ
【解説】
問題 38【合否を分けそうな問題】
ケアマネージャー試験は、決して何が出るのかさっぱりわからない試験ではありません。高齢者の身体的・精神的な特徴と高齢期に多い疾病と障害も出題範囲にあげられています。
◆ 高齢者の身体的・精神的・心理的特徴
◆ 高齢者に起こりやすい疾病および障害の特徴
◆ 高齢者に多くみられる各種の疾患
※ 循環器: 心筋梗塞、狭心症、高血圧症、心不全、不整脈、閉塞性動脈硬化症
※ 神経内科: 脳血管障害、パーキンソン病、てんかん、硬膜下血腫、高次脳機能障害、筋萎縮性側索硬化症、シャイ・ドレーガー症候群、ピック病、クロイツフェルト・ヤコブ病、脊髄小脳変性症、多発性硬化症、重症筋無力症、ハンチントン舞踏病、ギラン・バレー症候群、本態性振戦
※ 呼吸器: 慢性閉塞性肺疾患、気管支喘息、肺結核、
※ 消化器: 胃潰瘍、ウイルス肝炎・肝硬変、
※ 腎・内分泌・代謝: 腎不全、糖尿病、脂質異常症、早老症、
※ 悪性腫瘍
※ 筋・骨格系: 関節リウマチ、骨粗鬆症、大腿骨頸部骨折、変形性股関節症、変形性膝関節症、後縦靭帯骨化症、脊髄損傷
※ 産婦人科: 子宮脱、更年期障害、その他
※ 泌尿器科: 前立腺肥大症、前立腺がん、尿路結石、尿閉、尿失禁、膀胱留
置カテーテル
※ 皮膚科: 疥癬、白癬・カンジダ症、皮脂欠乏症、皮膚掻痒症、湿疹
★ 疾病の特徴(疫学、病因など)、基本症状、治療、経過、生活指導、ケアプラン作成時の注意事項などに着目した学習が効果的とおもわれます。
1× 【5訂 第3巻17P】
放置すれば死亡する重大な病気ですが、治療は脳外科で簡単に血腫を除去し、後遺症なしに治癒するとされています。
2○ 【5訂 第3巻205P】
設問のとおりです。
3× 【5訂 第3巻21~22P】
設問の文章は、パーキンソン病のものになっていますね。小脳運動失調として、言葉のろれつが回らない、上肢運動が拙劣になる、動作時に上肢がふるえる、歩行がふらつき動揺するなどがあります。
4○ 【5訂 第3巻35~36P】
設問のとおりです。
5○ 【5訂 第3巻205・252~255P】
設問のとおりです。
【解答】2,4,5